谷汲踊 |
今回訪れたのは岐阜県揖斐川町。
春は桜、秋は紅葉に彩られる西国第三十三番満願霊場、美濃の古刹谷汲山華厳寺です。
きょうは、その華厳寺門前で行われた豊年祈願祭「谷汲踊」をご紹介します。
毎年2月18日に行われる「谷汲踊」は別名「鎌倉踊」とも呼ばれ、その歴史は古く鎌倉時代にさかのぼります。
言い伝えによれば、壇ノ浦の戦いで勝利した源氏の武将達が鎌倉に凱旋する際に踊ったのが始まりと言われています。
その後、江戸時代中期にこの地を襲った大干ばつの際に雨乞いの踊りとして氏神様に奉納され、以降は豊年祈願の踊りとなっていったそうです。
しかし、時代とともに一度は完全に廃れてしまいます。
戦後、復興の気運の高まりとともに谷汲踊保存会が結成され、昭和33年には岐阜県の重要無形民族文化財の第1号に指定されました。
「谷汲踊」は豊年祈願祭である2月18日のほか、春の桜まつり、秋の紅葉まつりにも見ることはできますが、私はあえて冬枯れのこの季節に行われる豊年祈願祭の「谷汲踊」をお薦めします。
なぜなら、山深いこの地において収穫も少なく寒い冬を越し、やがて訪れる春に向かって「豊作の祈り」を捧げるというのがもっとも意味深いものであるのではないかと思うのからです。
桜や紅葉を背景に舞う「谷汲踊」は、さぞや華麗であろうと想像することは出来ます。
保存会の方々の努力で、この地を訪れる多く観光客に「谷汲踊」を見て頂こうという取り組みは素晴らしいものだとも思います。
しかし、本来の意味「豊年祈願」の踊りということに重点をおけば、雪が残るこの時期がもっともふさわしいと私は思うのです。
勝手な私的見解はこれくらいにして、「谷汲踊」についての簡単な解説をします。
「谷汲踊」は背中に大きな「シナイ」を背負い、胸には直径70㎝の大太鼓を抱えて敲きながら舞う勇壮な踊りです。
「シナイ」とは、長さ4m程の竹を細く割り裂いて広げ和紙で飾り付けをして扇型に組んだもので、羽根を広げた鳳凰を模した飾りだそうです。
「シナイ」の重量は40㎏、大太鼓を加えたその重量はかなりのヘビー級であることは間違いありません。
しかし、こう言っては踊り手の方に失礼かもしれませんが、大太鼓を抱えることによってバランスがとれるのかもしれませんね、背中ばかり重ければひっくり返ってしまいそうですもの。
さて、いよいよ「谷汲踊」見物の話にしましょう。
正午近くに到着した私は、まず華厳寺参道に並ぶ茶屋で腹ごしらえ。
「菜飯田楽」をいただいて午後1時からの「谷汲踊」を見学すべく、会場となる参道脇の町営駐車場に向かいました。
会場にはすでに見物の人垣が出来ていて、装束を整えた踊り手もスタンバイの状態。
「おっと、遅れをとってしまったかな」と思いましたが、なんなくカメラポジションも見つけ私もスタンバイOK!
間もなく「谷汲踊」が始まりました。
鉦を打ち拍子をとる2人を先頭に、背中の「シナイ」を大きく揺らしながら登場した踊り手は10人。
まっすぐ続く桜並木の参道 |
太鼓を打ち鳴らし 踊る姿は勇壮といった言葉がピタリとはまります。
色鮮やかな「シナイ」がしなりるさまは迫力満点。
お囃子や唄も加わり、ほら貝の響きがいっそう勇壮な踊りを盛り立てます。
踊りそのものは約20分程度ですが、見応え充分の迫力ある踊りにすっかり魅了されました。
華厳寺山門 |
時間をおいて再度、華厳寺山門前で踊りの奉納が行われるとのことなので、今度はカメラ越しではなく、じっくり見学しようと決め急ぎ足で華厳寺への参詣に向かいました。
花の季節にはさぞや華やぐのだろうなぁ などと春に思いを巡らせ桜並木の長い参道を歩けば、ちらつく雪も花吹雪に思えます。
華厳寺本堂 |
参道の両脇には茶屋や土産物屋、また菊花石の販売店や仏具などの店がずらりと並んでいて参拝客の目を楽しませてくれます。
華厳寺は1,200年の歴史を誇る天台宗の古刹であり、その名のごとき荘厳で美しいお寺です。
境内は広く、大きな本堂のほか幾つかの伽藍を有し、荘厳で格式高い雰囲気をそのまま現在に残しています。
また、「西国三十三所観音霊場」終着地の満願霊場である華厳寺には、無事遍路を終えた人々の杖や装束を収める納所などもあり千羽鶴などもたくさん奉納されていました。
遍路を終えた杖や装束の納所 |
ひととおりの参詣を済まし、再度の「谷汲踊」見学のため山門に戻ると、またもや大きな人垣が・・・。
先ほどの町営駐車場の会場とは違って、かなりタイトなスペースで踊る訳ですから当然見物人のスペースも超タイト。
いくえにもなっている人垣につけ入る隙間はありませんでしたが、前方の方が屈んでくださったので人々の頭越しになんとか見学することができました。
2回の公演を堪能し、充分に満足した私は帰路につきました。
今回は紹介できませんでしたが、この地、揖斐川町には華厳寺のほかにも「ミイラ寺」として有名な古刹両界山横蔵寺があります。
横蔵寺は、多数の重要文化財を有していることから美濃の正倉院とも呼ばれていますが、なにより「ミイラ」すなわち舎利物(即身仏)のお寺として名をはせています。
私も10代ころ両親とこの寺を訪れ、怖いもの見たさにビクビクしながら舎利堂を覗いたことを思いだします。
まだ即身仏のなんたるかを知らなかった私はエジプトのミイラのような布でグルグル巻きにされたミイラを想像して、おっかなびっくり覗いたのですが・・・。
そのエピソードは、また次の機会にということで。
横蔵寺は紅葉の美しい寺としても有名なので、また紅葉の季節にご紹介できたらと考えております。
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